2025年4月の電気代は10,323円。使用量は283kWhだった。
ふと3年前の明細を取り出してみると、2022年4月は677kWh使用して17,637円。使用量は半分以下になっているのに、料金はさほど変わらない。目を疑うような数字の対比だが、これは「電気を使いすぎた」話ではない。単純に、電気そのものが高くなってしまったという事実を示している。
ここ数年で「省エネ家電」「エコキュート」「太陽光発電」など、あらゆる“環境に優しい”機器が勧められるようになった。「便利です」「光熱費も下がります」「補助金もありますよ」と、まるで将来が保証されたかのような甘い言葉が並ぶ。
たしかに、導入直後のランニングコストは目に見えて抑えられる。だが、話はそれだけでは終わらない。真に怖いのは、“その後”に訪れる 維持コスト だ。
定期点検、部品の交換、いずれ必要になる全体のリニューアル。これらはすべて家計の中に長く、静かに積もっていく。導入時の補助金がその負担を一時的に覆い隠すが、「安く見える仕組み」であることを忘れてはならない。
実は、同じような構図が周防大島でも進行中だ。
それが「下水道整備」である。
過疎化が進み、住民の多くが年金生活者という今、島では巨額の公共インフラ事業が動いている。もちろん、整備費用の多くは国や県の補助金で賄われるだろう。しかし、インフラとは“つくったら終わり”ではない。むしろ本番は、稼働し始めてから始まる。
処理場の運転、人件費、設備の更新……そうした「日々のコスト」は、やがて税金や使用料という形で島民一人ひとりの肩に乗る。けれど、その“島民”はあと何年、どれほど残るのだろう?若者の多くは本土へ出ていき、戻ってくる気配は薄い。人口が減れば、当然、一人あたりの負担は重くなる。「環境にやさしい下水道」が、気づけば地域経済を締めつける負債へと変貌するかもしれない。
そして今、光熱費の高騰に便乗するように、新電力会社のセールスもやってくる。たとえば「ハルエネ」など。「今より安くなります」「切り替えも簡単です」と、魅力的な言葉で迫ってくるが、その裏にある契約条件や料金体系の不透明さには、慎重な目が必要だ。
私も一度、その巧みなセールストークに心が傾いたことがある。けれど、その先にある暮らしの姿を想像したとき、足を止めた。DXや5Gやウイスキーや清水國明やら、うさんくさいものをすぐに信用する周防大島の町の人なら簡単に飛びつくだろうが。
「便利さ」や「お得さ」の奥にある本当のコストを、これからの周防大島は、もっと丁寧に見つめ直していく必要があるのではないか。