現在、私が管理している農地は約25アール、そのうち実際に耕しているのはおよそ15アール。やろうと思えば、もっと広げることもできる。けれど、それに見合う体力が自分にあるかと言われれば、もう無理は利かない年齢だ。だから、無理に面積を増やすつもりはない。
私にとっての農業は、ビジネスでも競争でもない。「暮らしの延長」であり、「好きなことのひとつ」なのだ。収穫した野菜が誰かの食卓に並んで「おいしかった」と言ってもらえる。それだけで、もう充分すぎるご褒美だが、やはりそれに最低限の収入が得たいというのが希望だ。
SNSを開けば、「年収1000万農家」「サラリーマン以上の農業経営」といった夢のような文言が踊っている。たしかに、それを目指す若い人がいてもいい。けれど、私が目指しているのは、たぶん違う風景だ。
20アールくらいの小さな畑を、日々こつこつと手入れしながら、残りの時間は読書や文章、地域の活動、政治家との談話、旅、自然観察にあてる。そういう、静かで実りある暮らしのほうに心が向いている。
この先、どんなふうに人生が展開していくかはまだわからないけれど、少なくとも「好きなことをする」という軸だけは、できるだけ手放さずにいたい。畑があって、季節があり、土と語らいながら暮らしていける。それが、私にとってのささやかで確かな贅沢なのだ。
